腰が痛いのはなぜ?腰痛の原因は一つではありません
「朝起きると腰が痛い」
「長く座っていると腰がつらくなる」
「立ち上がるときに腰が痛い」
「前にかがむと痛いけれど、歩いていると少し楽になる」
一言で「腰痛」といっても、痛みの出方は人によってさまざまです。
では、腰痛は一体どこから出ているのでしょうか?
実は腰には、筋肉や筋膜だけでなく、椎間板や椎間関節、靱帯、神経など、さまざまな組織があります。
そのため、「腰が痛い=腰の筋肉が悪い」と単純に考えることはできません。
今回は腰痛の中でも、特に運動器に関係する
①筋・筋膜
②椎間関節
③椎間板
の3つを中心に、腰痛について考えてみましょう。
そもそも「腰痛」は病名ではありません
「腰痛」という言葉は、特定の病気を表しているわけではありません。
腰周辺に痛みを感じている「症状」を表す言葉であり、腰痛の原因には様々なものがあります。
腰椎の周囲だけを見ても、筋・筋膜、椎間板、椎間関節など、痛みに関係する可能性のある組織が複数存在します。
腰椎は複数の椎骨・椎間板・関節などから構成されるため、どの高さのどの組織が痛みの原因なのかを正確に特定することは簡単ではありません。
つまり、「腰痛」という一つの症状の中に、さまざまな状態が含まれているということです。

① 筋・筋膜が痛みに関係する腰痛
まず考えられるのが、腰を支えている筋肉や筋膜などが痛みに関係している腰痛です。
腰の周りには、身体を支えたり、姿勢を保ったり、身体を動かしたりするための多くの筋肉があります。
物を持ち上げる、身体をひねる、同じ姿勢を長時間続けるなど、腰周囲の組織に負担が加わる場面は日常生活にもたくさんあります。
急に腰が痛くなる、いわゆる「ぎっくり腰」でも、筋肉・腱・靱帯などの軟部組織の損傷が原因の一つとして考えられています。
ただし、ぎっくり腰自体も病名ではなく、原因は一つではありません。
そのため、「筋肉が硬いから腰痛になった」と一つの理由だけで説明するのではなく、どんな姿勢や動作で痛むのか、どのくらい負担がかかっていたのかなども含めて考えることが大切です。
② 椎間関節が痛みに関係する腰痛
腰椎の後ろ側には、上下の骨をつないでいる「椎間関節」という小さな関節があります。
腰を曲げたり、反らしたり、ひねったりできるのは、椎間板だけでなく、この椎間関節などが一緒に働いているためです。
この椎間関節やその周囲の組織が、腰痛に関係している場合があります。
ただし、ここで注意したいことがあります。「腰を反らすと痛い=椎間関節が原因」と、一つの動きだけで判断できるわけではありません。
腰を反らしたときの痛みには、ほかの組織や疾患が関係することもあります。
「どんな動きで痛むのか」は大切な情報ですが、一つの動作だけで痛みの原因を決めつけないことが重要です。
③ 椎間板が痛みに関係する腰痛
腰椎の骨と骨の間には、「椎間板」があります。
椎間板は、脊椎に加わる力を受けながら、腰を動かすためにも重要な組織です。
この椎間板の変化が腰痛に関係する場合があり、腰痛診療ガイドラインでも「椎間板性腰痛」は腰痛を生じ得る病態の一つとして挙げられています。
ここでも注意したいのが、「前にかがむと痛い=椎間板が原因」と決めつけないことです。
さらに、画像検査で腰に変化が見つかったからといって、それだけで現在の痛みの原因が決まるわけでもありません。
例えば、日本整形外科学会は加齢などによる脊椎の変化について、変化があっても無症状の人がいることを説明しています。
つまり、「画像に変化がある」=「そこが痛みの原因である」とは言い切れません。
画像だけではなく、症状や経過、身体の状態などを合わせて考える必要があります。

同じ「腰痛」でも、痛み方は違います
腰痛を考えるときに大切なのは、「腰が痛い」という情報だけで終わらせないことです。
例えば、
どこが痛むのか
どんな動作で痛むのか
どんな姿勢で楽になるのか
動き始めが痛いのか、動き続けると痛くなるのか
朝と夜で違いがあるのか
痛みは良くなっているのか、悪くなっているのか
こうした情報を組み合わせる事で、その腰痛がどのような状態なのかを考える材料になります。

腰以外が原因のこともあります
ここまで筋・筋膜、椎間関節、椎間板を中心に説明してきましたが、すべての腰痛が運動器から起こるわけではありません。
腰痛の中には、骨折、感染、腫瘍などのほか、血管疾患、泌尿器疾患、婦人科疾患、消化器疾患など、腰以外の病気によって起こるものもあります。
こうした腰痛については、次の記事で詳しく取り上げます。
腰痛は「原因を一つに決める」ことから始めなくてもいい
腰が痛いと、「結局、どこが悪いんですか?」と原因を知りたくなるのは自然なことです。
しかし腰痛では、筋・筋膜、椎間関節、椎間板など複数の組織が痛みに関係する可能性があり、痛みの原因となっている組織を正確に一つに特定することが難しい場合もあります。
だからこそ、「原因は○○です」と早く一つに決めることよりも、上述した情報を一つずつ整理していくことが大切であり、なかなか改善しない腰痛でお悩みの際は、医師からの診断や選択された治療内容などに「疑問」「疑念」を抱くことも大切です。
次は「この腰痛、様子を見て大丈夫?」について考えてみましょう
腰痛の多くは運動器に関係していますが、中には医療機関への相談を優先した方がよい腰痛もあります。
また、重篤な病気だけではなく、「腰を動かすのが怖い」「このまま治らないのではないか」といった不安や考え方が、腰痛の経過に関係することもあります。
次の記事では、
🔴 Red flag sign(レッド フラッグ サイン)
🟡 Yellow flag sign(イエロー フラッグ サイン)
🟢 Green flag sign(グリーン フラッグ サイン)
という3つの視点から、「この腰痛、このまま様子を見て大丈夫?」を考えていきます。
次の記事 ―
※この記事は腰痛についての一般的な情報を提供するもので、個別の診断や治療方法を示すものではありません。強い痛み、下肢の筋力低下やしびれ、排尿・排便の異常、発熱、外傷後の腰痛などがある場合は、医療機関へご相談ください。